こんにちは!
さいせい㈱の真造です。
今や空前の造船ブームと言われています。
原因は、まだまだインフラ設備の建設需要が大きい、
中国への原材料(鉄鉱石・石炭)の輸送です。
(途方もない中国の粗鋼需要が、その中心です)
わが国には、もう馴染みの薄い産業になってしまいましたが、
「造船」というと、瀬戸内育ちの私としては、やはりかつての
わが国産業の雄というイメージがあります。
でも、数年前までは、斜陽産業の代表格のように言われていました。
今日、日刊工業新聞に載った「さいせい㈱」の記事を見て、
九州にある某企業の経営相談を電話で行っていた際に、
たまたま、昔、お手伝いしていた会社の名前が出てきて、
非常に懐かしく思い出しました。
私が、かつて某コンサル会社に勤めているとき、九州の事業所に
勤務していましたが、その時に担当した会社でT産業という会社が
ありました。H県のU市にある会社です。
元々、U市は(今でもそうですが)軍港で、今でも大きな造船会社が
いくつもあります。
その中で、船に載せる荷物を吊り上げるクレーンを製造していた
のがT産業です。
かつては、もちろん花形産業です。
たくさんの従業員を抱え、市内から外れた海に面した大きな敷地に
大きな工場が建っていました。
しかし、私が担当していたころは、既に往時の面影は無く、
負債も多く、金融資機関もハラハラしながら注視していたと思います。
(会社の状態としては、全く予断を許さない状態でした)
当時、売上は100億円程度、先細りする国内の需要に、
起死回生の策として、中国に工場を建設することになりました。
上海から4時間くらい、高速道路と地道を走り継いだC市に工場が
建設されました。揚子江に面した途方も無く広い敷地です。
社長に初めて工場の完成予想図を見せられた時、わが国とは
あまりにもかけ離れたそのスケール感に、イメージが、なかなか
追いつかなかった程です。
最初は中国が造船事業を国策産業としていたので、造船ではなく
上述した舶用機械の工場として立ち上げました。
しかし、本当の目的はやはり造船事業を中国で行うことでした。
当時、私の提示した戦略レポートでも、中国における造船需要
が大きく伸びることを予測していたし、今後、人件費の高い
日本や韓国(当時は世界一)では、造船という事業自体が成立
しないことを明記していました。
特にメガドックといわれる大型船舶の製造においては、今後、
世界地図が塗り替えられることが、調査により判明しました。
(これは私のレポートの中でも、予測の正しさとしては少し自慢かな・・・)
しかし、その後が大変でした。
C市の工業大学を日曜日、貸しきって、中国人のワーカー700人を
相手に日本企業で働くための基本素養の研修をしたり、
(これは外資が中国で操業する時には、当時、義務付けられていた)
また、これはおそらく、当時としては画期的なことだと思いますが、
手本になる文献や資料もないところで、日本企業で働く中国人の
賃金体系や評価基準を設計しました。
上記は通常の日本企業のものと違い、またはアングロ・サクソン的な
ものとも違い、よりドライで、公平性に富んだ物だったと、今でも自負
しています。(人事におおては、平等より公平が世界標準です)
そうこうしているうちに、中国工場も無事立ち上がり、
操業が開始されました。
当時のコンサルティング・メンバーには、元アサヒビールで中国工場の
運営に関与していた者もいましたが、大企業と違い、中堅・中小企業が
これら事業を行う上での障害の多さや、困難について熱く語っていたのを
今でも覚えています。
そして現在、T産業が2006年より念願の造船事業を中国で開始し、
ある地方紙の報道によれば、2011年までに、造船で2,130億円、
舶用機械で720億円を上回る受注を、デンマークはじめ世界から
得ているということです。
売上高も2011年には、1,350億円。2007年の5倍というから、
昨年も200億以上の売上を計上していることになりますね。
これは、「再生」の成功事例だと思います。
「再生」が民事再生や法的整理等だけに捉えられるのを、
私は快く思っていません。
英語では「再生」を「ターンアラウンド(方向転換、または「軌道修正」)
というそうです。
私の考える「再生」もどちらかというと、そのイメージです。
ターン・アラウンド(方向転換)により、T産業は見事に「再生」しました。
時にワンマンと言われ、優秀な古参社員でさえ、意見の相違により、
会社を去らなくてはならない状況もありました。
私自身、経営改善の方策で、銀行さんと一緒に、格付けを上げるため
何時間も協議した事もありました。
(地元への雇用の問題とか、地域経済に与える影響を考えると、
銀行さんも、何としてでも、潰すわけには行かなかったのだと思います)
それでもピンチをチャンスに変え、今日の成功を勝ち取ったのは、
やはり社長のビジョン、戦略、信念だと思います。
現在の造船業界の活況を当時、誰が本気で、確信したでしょうか?
私もレポートでは、予測しましたが、ここまでとは想像しませんでした。
やはり社長だけです。
「再生(ターン・アラウンド)」の必要な会社の社長さんと話していると、
今でも、T産業の社長の顔が、ふと浮かぶことがあります。
中国のホテルで一緒にお酒を飲んだときの、不安と期待の入り混じった、
だけど自分の信念を最後まで信じる、その決意が表に出た顔を思い出す
ことがあります。
一般的に我々は「再生」において、まずB/Sから入ります。
遊休資産の売却、流動比率の改善、そしてキャッシュ・フローの改善。
まずは守りを固めます。
しかし、本当の「再生」は、やはり攻めにあります。
社員の意識を変え、コア(収益)事業に経営資源を集中させ、
戦略を練り、戦術を立て、新たな企業に生まれ変わらせる。
我々の事業は、金融機関さんとの連携も多いですが、
これらのことは、残念ながら金融機関さんには出来ないことです。
(まあ、だから我々のニーズがあるのでしょうが・・・)
T産業、今日、久しぶりに耳にした名前ですが、
同社も、私の中では立派に「再生(ターン・アラウンド)」に成功した
企業のひとつです。
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